おうちdeおウチ Lab.
Afterコロナ時代の生活様式に関するアンケート分析
コロナウイルスの世界的感染拡大は私たちの日常の風景を一変させました。コロナ禍が日本を席巻してから、まもなく1年半。ようやくワクチン接種も本格化した今、私たちはwithコロナからafterコロナへと、その意識をリセットしていく時期に来ているのかもしれません。
コロナ禍によって私たちの生活スタイルや価値観はどのように変化したのでしょうか。感染が収束したとき、私たちが取り戻したい「日常」とは、果たして「コロナ前と同じ暮らし方」に戻ることなのでしょうか。それとも、コロナ禍によって得た学びは、私たちを新しいフェーズへと押し出してくれるのでしょうか。
withコロナによって生活様式がどのように変化したのか、afterコロナの日常に求めるものは何なのか。おうちdeおウチ Lab.では日本在住の皆さんに一斉アンケートを行いました。そこから見えてきたものとはーー
SNSを通じてアンケートへのご協力を呼びかけると、たった数時間で1,120名もの声が集まり、afterコロナの生活スタイルについて多くの方たちがすでに真剣に考え始めていることを実感しました。
回答者の9割近くが女性だったのも印象的です。また、20代から40代の社会の中核を担う世代の回答が多かったのも、コロナ前後で大きく変容した生活様式が、この世代に与えたインパクトの大きさを物語っています。
その上で、コロナ禍による生活様式の変化が、私たちに多くの気づきをもたらしてくれたという一面も、多くの回答から読み取ることができました。1つ1つの回答を分析することで、afterコロナで目指したい暮らしスタイルが浮かび上がってきました。
リモートワークが可能だったのは3分の1
回答者のうち、部分的にでもリモートワークが可能になったという人は22%でした。働いていないという35%を除くと、働いている人のうちリモート対応が可能になったのはおよそ3分の1で、残り3分の2はリモート対応できないまま仕事を継続していたことがわかります。
コロナ前の生活に戻りたいか
数字だけみると、「コロナ前の生活に戻りたい」人が74%と圧倒的で、「戻りたくない」人が9%と少数派になっています。しかし、これを額面どおりに受け取ることはできません。「戻りたい」と答えた人の中にも、よい変化については「コロナ禍のスタイルを維持したい」と考えている人が少なくないことが、のちの質問の回答から浮かび上がってくるからです。
また、就労の有無、さらにリモートワーク対応の可否によって、「戻りたい」と答える割合が大きく変化している点にも注目です。リモートワークできた人は、コロナ前に「戻りたくない」と答える割合が、ほかのグループと比べて多くなっているのです。オンライン対応の可否が、withコロナを快適に過ごすための1つのキーになっていることが見えてきます。
コロナ前の生活に戻りたいか
リモートワーク状況別「コロナ以前の生活への希望」
コロナで増えた時間・減った時間
維持したい/したくない時間
Withコロナで生活様式はどのように変化したのでしょうか。最も増えたのは「家族時間」そして「家事」。リモートワーク対応になった人に限らず、ほとんど全ての人にとって夜間や休日の外出機会が激減した結果とも言えるでしょう。睡眠時間についても、増えたと回答した人の方が多くなりました。休養の時間もプライベートな時間も増えたということで、ポジティブな変化としてとらえたくなりますが、「家事」や「家族時間」の増加については、必ずしもポジティブにとらえている人ばかりではなく、逆にストレスが増加した人もいたようです。
一方、全体的に大きく減少したのが「友達交流」の時間でした。実に9割以上もの方が、友達との交流が減ったと回答しています。これについても、「コロナ前の状態に戻したい」と考えている人が相当数(75%)いる一方で、「この状態はそう悪くない」と考える人も一定数いることがわかります。つまり、煩わしい関係、惰性で続けていたような関係や、仕方なく付き合っていたようなしがらみから脱却するチャンスだととらえた人もいたようです。
「移動時間」が減少したという回答も67 %にのぼりました。リモートワークに伴う通勤時間の減少のほか、外出機会が減ったことによる減少なども含まれますが、この状態を「維持したい」人が30%いる一方で、「コロナ前に戻したい」人も37%います。
この辺りは、もう少し丁寧に分析していく必要があるでしょう。
コロナによる時間の増減
維持したい/したくない時間
個別の声から見えてくる
「戻りたくない」「戻りたい」の微妙な揺らぎ
では、回答者の皆さんの具体的な「戻りたくない」「戻りたい」理由を見てみましょう。
「戻りたくない」理由として、目立つのは「必要でないこと」に割く時間が減った、という声。「不必要な会議」「付き合いの飲み会」「PTAや町会の会合」などが減少、あるいはコロナを理由にNOと言いやすくなったことを、withコロナによる前向きな変化ととらえています。リモート化により、さまざまな活動が効率化された結果だと言えるでしょう。
また、在宅時間の増加を前向きにとらえた回答も多くありました。「家族との関係が改善した」「ライフバランスを考えるきっかけとなった」「おうちキャンプやお取り寄せといった新しい楽しみ方を発見した」など、withコロナによる生活様式の変化を、制限や制約としてネガティブにとらえるのでなく、その変化がもたらしたポジティブな面に目を向けていることがわかります。
一方、コロナ前に「戻りたい」理由として目立ったのは、仕事の負担が増加したという声。在宅勤務によって業務が長時間化したり、気分転換がうまくできないといった意見に加えて、接客業では感染対策のための負担がかなり増えたようです。
さらに家族時間が増えたことによって、家事負担や家族間のストレスの増加をあげた人もいます。家族時間が増加したことによる影響は、明暗が分かれた印象です。
また、多くの人の「戻りたい理由」に、友人との交流や旅行などの娯楽時間を取り戻したいという切実な思いや、子どもの教育面での影響を懸念する声、さらに自分自身の先行きを不安視する声もありました。
戻りたくない背景・理由
戻りたい背景・理由
withコロナで新しく取り入れたこと
おうち時間の増加をポジティブにとらえた人もいればネガティブにとらえた人もいる。もちろん家族との関係性や仕事内容、住環境など、それぞれの条件によって置かれた状況は異なるでしょう。その上で、もう1つ浮かび上がってきたのが、withコロナの生活様式において、「新しいこと」を取り入れたかどうか、という違いでした。
新しいことを取り入れた人よりも、新しいことを何も取り入れなかった人の方が、「コロナ前に戻りたい」と回答する割合が多く、withコロナの変化を前向きにとらえることができなかった様子がうかがえます。
コロナ以前の生活への希望:新しいことを取り入れたか否か
新しく取り入れたことの有無別:以前の生活に戻りたいか否か
一方、新しいことを取り入れた人たちの「チャレンジ」の内容は実にさまざまでした。
「You Tubeを活用した筋トレで健康になった」「BBQができるようにインナーガレージをつくった」というものから「本当に付き合いたい人とだけ会うようになった」「他人に惑わされない価値観を確立した」といった価値観の転換、さらには「転職する」「勉強を始めた」「田舎暮らしを目指す」など、人生の方向転換のきっかけにした人も少なくないようです。
コロナ禍は私たちに大きな犠牲を強いるものでしたが、それらは全てがネガティブなものではなく、生活スタイルの大きな転換を余儀なくされたことで、得たものも小さくないようです。その1つが、暮らし方、生き方の棚卸し、リセットだと言えるのではないでしょうか。自分が本当に大切にしたいものは何か、自分の人生の優先順位はどれなのかを見つめ直し、暮らし方、働き方の選択肢を広げていくターニングポイントとして昇華させた人たちが少なからずいるようです。
生活スタイルの変化に柔軟に対応し、前向きなマインドでwithコロナを乗り切った人の方が、そこでの経験をいかして、暮らし方、生き方をafterコロナに向けて進化させていけそうだということが、今回のアンケートから見えてきたのではないでしょうか。
ラボマネージャ 永井真理子氏、調査担当 岡本亮氏
オンライン取材でお聞きしました。