生活者のインサイトを引き出し、和食器の魅力を再発見。おうちdeおウチ Lab.と老舗和食器販売「たち吉」との
コラボから見えてきたもの

うつわモニター企画,たち吉,おうちdeおウチ Lab.

おうちdeおウチ Lab.では、創業270年の京都の老舗和食器販売「たち吉」とコラボし、暮らしへのうつわの取り入れ方を考える、うつわモニター企画を行った。和食器を取り入れたテーブルコーディネート術を紹介するオンラインイベントの後、10名のモニターを募集し実際の食卓で2週間のあいだ和食器を使用いただき、その様子を日々、SNSに投稿してもらう試みを実施。生活者のインサイトを知ることで、新たな食器の使い方の可能性や商品開発に繋がるヒントが見えてきた。

今回は、株式会社たち吉の営業推進部に所属する山田さんと大石さんに、企画を通した気づきや今後の展望を伺った。

生活者のインサイトを引き出し、和食器の魅力を再発見。おうちdeおウチ Lab.と老舗和食器販売「たち吉」のコラボにより見えてきたもの

株式会社たち吉 営業推進部 部長 山田 靖幸さん(左)
営業推進部・Web営業部チームリーダー 大石 望美さん(右)


今回は、どのような経緯でうつわモニター企画を実施されましたか?

山田たち吉のうつわはこれまで、主に50代〜70代の女性のお客様に多く使っていただいていました。オンラインショップのリニューアルにあたって、今後はその娘さん世代の30~40代の方にも使っていただけるようにと、商品ラインの変更に取り組んでいます。トライアンドエラーを重ねて様々な検討をしていく上で、今回UXDセンターさんから提案を受けて、「暮らしと食器」にテーマを絞って企画に取り組むことにしました。

大石今回はご家庭でのご使用に特徴が出やすそうな三段重と八角皿2枚を提供し、モニターの方に使っていただきました。

生活者のインサイトを引き出し、和食器の魅力を再発見。おうちdeおウチ Lab.と老舗和食器販売「たち吉」のコラボにより見えてきたもの 生活者のインサイトを引き出し、和食器の魅力を再発見。おうちdeおウチ Lab.と老舗和食器販売「たち吉」のコラボにより見えてきたもの

今回、うつわモニターで使用した「たち吉」の八角皿と三段重。


モニターの自由な発想で、
うつわの新たな魅力を発見

企画を終えて、どのような発見がありましたか。

山田食器を使ったテーブルコーディネートをInstagramにアップしていただいたのですが、モニターの方々の自由な発想に良い意味で驚かされました。特に、磁器の三段重に親子丼を入れていただいて、日常の食卓にお重感が増したとの投稿をいただいたことにはびっくりしましたね。

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うつわモニターにご参加いただいた@ki_0193さんの投稿。

この三段重は商品の特徴上、おせち用としてお正月にお買い求めいただくことが多い商品です。お重は特別な時に使うもの、という意識がありますが、そこに日常のお料理を入れていただいたことで、こんな風にも使えるんだという発見がありました。

私たちも、一段目にお菓子、二段目にフルーツ、三段目にサンドイッチを入れてアフタヌーンティーのうつわにするといった、おせち料理以外の使い方も提案してはいました。しかし、さらに自由な発想で使っていただいたことで、まだまだ多用途にお使いいただける余地があるんだと再認識しましたね。

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モニター期間中、自由な発想でうつわを楽しむモニターの皆さんの投稿。

大石三段重の販売が伸びるのは通常年末なのですが、今回は盛り上がりが早く、年末を迎える前にオンラインショップだけで通常年度の10倍のお申し込みがありました。企画の波及効果があったと思います。漆器や樹脂のお重が多い中で、比較的メンテナンスしやすい磁器であること、染付の柄にも興味を感じていただけたのかもしれません。

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「たち吉がどんなうつわを扱っているか知っていただく機会にもなった」と話す大石さん

山田加えて、食器の中でも和食器にハードルの高さを感じている方が多いこともわかりました。なんとなく知識がいるのかな、マナーが必要なのかな、と。確かに、メンテナンスが必要な食器があるのも事実です。ただ、実際に使っていただくことで、思っているよりも自由に使えることを体感していただけたかなと思います。

大石モニターさんの中には普段食器を使い慣れない方もいらっしゃったので、取り扱いについて質問をいただいたのも学びになりました。これまでもお手入れの仕方については発信していましたが、「電子レンジや食洗機は使えますか?」「なぜ使えないのですか?」など実際の質問に答えることで、お伝えの仕方も考えることができました。


ユーザーの意見が
今後の企画のヒントにも

三段重は、ご家庭で「一人につき1セットずつ使いたい」という意見も複数出ましたよね。プロダクトに関する新たな視点や意見は、今後の商品開発に生きる可能性がありますか?

山田ぜひ商品に取り入れていきたいですね。お重に関しては、最近、小ぶりの新作を出しました。

大石お重が注目されたことで、「一人分としては重い」「もっと小ぶりだったらいいのに」という声が出てきていました。そこで最近、三段重よりも小ぶりな二段の陶箱の新作を発表しています。別の経緯もあって生まれたものですが、よりコンパクトにお使いいただけると思います。

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鳥獣戯画シリーズ」として展開中の二段の陶箱。
マグカップと比較すると、通常の陶箱よりも小ぶりなサイズに。

山田他にも、収納の仕方に関する意見も取り入れたいですね。今回のモニターさんの選考を通して、皆さんがどのくらい食器を持っているか、どんな使い方をしているかアンケートをしたんです。お店では、「食器がいっぱいで置くところがないから……」とおっしゃるお客様が多いですし、周りにもそう言う方が多いんですね。

今回、実際はどう収納されているか、モニターさんの投稿写真で拝見したことで具体的なイメージを持つことができました。収納するときのことまで考えて、大きさは適当なのか、重ねた時に収納しやすいかどうかなど、今後形状やサイズを検討していきたいです。

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「生活様式に対応したうつわを提供していきたい」と今後の展望を語る山田さん

また、今取り組んでいるリサイクル食器の商品開発にも活かしたいですね。回収した食器を粉砕して、原料に50%の割合で練りこみ、CO2排出量を減らすため低い焼成温度で焼き上げ、もう一度形にする取り組みです。デザインや発色が限られるなど制約が多くありますが、その中で本当に良いと言っていただけるものにしたいので、ユーザーの声を取り入れていきたいです。


“いま”の暮らしに寄り添ううつわであり続けるために

たち吉さんの今後の展望を教えてください。

山田たち吉には、日本全国の産地にある優れたものをセレクトして販売している商品と、自社で開発し展開している、自社ブランドの商品とがあります。今後は、自社ブランドの商品を強化していきたいと考えています。特に、30〜40代の方に向けた商品領域をどのように伸ばしていくかが課題ですね。

例えば、これまでは主に贈答品用として、お皿5枚を1セットにして重厚な包装で販売するような形が一般的でした。しかし徐々に、贈答用だけではなく、自宅用に食卓を彩る食器を求める方も増えています。それに合わせて、1ピースやペアなどご家庭で気軽に使えるシリーズの展開をはじめました。包装もデザイン性と堅牢性は残しつつ、環境負荷がかからない比較的簡易なものに変えています。生活様式に対応したうつわを提供していきたいですね。

生活者のインサイトを引き出し、和食器の魅力を再発見。おうちdeおウチ Lab.と老舗和食器販売「たち吉」のコラボにより見えてきたもの

おいしいうつわシリーズ」は1点ずつ、好きなデザインのうつわを必要な点数だけ購入できる。
写真は「シンプルシリーズ」のうつわ。

他にも新規事業を進めて行こうとしているので、私どもの商品をご提供して活用いただくなどの形でおうちdeおウチ Lab.さんとも継続的に取り組めればと思っています。

大石今回のような、うつわの使い方を広めるイベントは今後も続けていければと思います。おうちdeおウチ Lab.は、今人気のフードコーディネーターさんをご提案いただけるところも魅力です。たち吉もSNSでの発信を続けていますが、動画コンテンツはほぼない状態なので、その辺りも相談にのっていただければと思います。今の時代のニーズに合ったサービスを提供していきたいです。


株式会社たち吉
株式会社たち吉

1752年創業。江戸時代から続く、老舗和食器販売会社。2022年で創業270年を迎える。全国各地の窯元を巡り、国内有数の和食器の仕入れや、オリジナル商品の開発を行う。京都を代表する和食器ブランドとして、人と暮らしに寄り添い、和のうつわを楽しむひとときを提供している。

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