2022.01.31「モノ」でなく「コト」の大切さを知っているからこそ
ワクワクが止まらない「未来の街」

EVOLOVEキャンペーンの一環として実施した「X-minutes CITY」。徒歩X分の暮らしを自分たちでデザインすることで理想をカタチにしてきたパリやストックホルムの取り組みから着想を得てスタートしたこのプロジェクトに、北は北海道から南は九州まで、日本全国の大学生たち総勢50名、15チームが参加してくれました。

本当の「豊かさ」ってなんだろう。そもそも「暮らす」ってどういうことだろう。そんなプリミティブでみずみずしい問いから、次世代が求める「豊かな街のカタチ」が次々と生まれてきました。


最終プレゼン発表会に選ばれたのは、4チーム。どのチームのプレゼンからも、「理想の暮らし方」「ほんとうの豊かさ」を求める若い人たちのまっすぐなワクワクがあふれていました。そこにあったのは「モノ」ではなく「コト」の大切さを本能的に知っている若い感性ならではの視点でした。

つながりが生まれる街〜住宅街を「住む」から「暮らす」へ

富永凛(九州大学共創学部2年)
霜田未来(名古屋経済大学管理栄養学科3年)
上出真子(神戸女子大学健康スポーツ栄養学科2年)
「モノ」でなく「コト」の大切さを知っているからこそワクワクが止まらない「未来の街」

「豊かに生きる」とは、「ストレスを感じずに生きること」と定義した3人は、今の暮らしで何がストレスになっているのかを探ることから企画をスタートさせます。そこで上がってきたのが「ゴミの悩み」「孤独の寂しさ」「理想の食事のハードルの高さ」というコロナ禍で顕在化したストレスの3要素。それらの解決策として、「簡単に生ゴミを処理できる方法」「人と関われる場」「気軽に健康的に食事ができる場」の3つが、「理想の街」には必要だと考えました。

そこから生まれたのが、ゴミの循環がつなげるコミュニティというアイディアです。その骨格となるのが「各家庭に配布するコンポスト」「地域共有の畑」「共有スペース」そして「お弁当屋さん」。それぞれの生ゴミからできた堆肥を持ち寄る畑での農作業が、人と人の交流を深めます。共有スペースでは、畑の野菜をみんなで調理して楽しく食べたり、コワーキングスペースとして活用したり。日々を忙しく過ごしている人は、それらの食材を活用したお弁当屋さんで、安くて健康によい食事を便利に購入することができるのです。それぞれがそれぞれのスタイルで無理なく繋がる「こじんまりとした新しい街」のイメージが生まれました。

寂しい気持ちを共有したところから
アイディアが動き出した

「私たち、この企画をつくるにあたって、まず自分たちのことを話そうっていうことからスタートさせたんです。3人には実家から離れて一人暮らしという共通点があって、コロナ禍の中、寂しさを抱えていたということを再認識できました」(霜田さん)

「夜だけでなく朝の時間にも、ちょっとの隙間を縫ってひたすら話す。そのプロセスそのものがすごく楽しかった。離れている人ともこうやってつながることができるっていうことを気づかせてもらった感じです」(上出さん)

「大学進学で県外に出たからこそ、外側から見ることで地元のよさを改めて認識した」と語る霜田さんは新潟出身。「シャッター街が増えつつある地元をもう一度活性化したい、好きな地元をもっと魅力的にしていきたい」と、X-minutes CITYプロジェクトから得たインスピレーションを次の目標につなげて語ってくれました。


生ゴミを宝に、心を豊かに〜コンポストコミュニティの提案

レイク沙羅(九州大学共創学部1年生)
江波太(九州大学共創学部3年生)
甲斐夕葉(九州大学共創学部1年生)
「モノ」でなく「コト」の大切さを知っているからこそワクワクが止まらない「未来の街」

奇しくも、チームK と同じ「コンポスト」を企画の中心に持ってきたチームHの3人は、これまで学生寮でコンポストを運用してきた経験をベースに、さらにその先の「目指すコミュニティ像」を描き出す挑戦となりました。

自分たちの暮らしにおける「豊かさ」とは何かを考えた3人は、「物質的には飽和状態の今、求められているのは精神的な豊かさ」であることから「人との関わり合いや地域の生活環境」をさらに豊かにしていくことが必要だという結論を導き出します。

そこで、既存ゴミステーションにコンポストを設置することで、「地域での循環型社会」を作り出すことを目指しました。しかも、住宅街の中心に菜園をつくる地方バージョンと、マンションの屋上に共同菜園を作る都市バージョンを立案。どちらも、コンポストがきっかけで地域のコミュニケーションが豊かに育まれ、野菜の育て方やゴミが資源になると学ぶことで、食育や環境教育にもつながります。さらに、震災などの非常時には、人と人とのつながりが大きな助け合いの力を発揮します。そんな社会のセーフティネットを平時から構築できることも、コンポストコミュニティの大きな利点。学生寮での実績があるからこその、地に足のついた説得力のあるプレゼンテーションとなりました。

実現可能性はさておき
まずは理想を語り合うことから始めた

「僕らは実際に学生寮でコンポスト運営をしてきたけれど、先の計画は詰めておらず、現状の運用で手がいっぱいでした。しかし今回、未来のコミュニティ像を考える機会を得たことで、僕らの理想形ってこういうことだったんだよね、とすり合わせることができました」(江波さん)

「レイクさんが最初に、“実現が難しくてもいいから理想を出していこう”と言ってスタートしたのがよかったですね。理想を話す楽しさ、それをカタチにしていくワクワク感、そこに自分たちならばどう関わるか、という具現化の手応え。そういう1つ1つが楽しかったです」(甲斐さん)

「時として、なんでゴミを扱うの!?というリアクションをされる僕らの活動ですが、この方向でいいんだと確信を得られました」(江波さん)

と、今回のX-minutes CITYプロジェクトでの手応えを語ってくれました。


X-minutes Land 〜 X分でさまざまな人・まちと出会える暮らし

前田衣織(国際教養大学1年生)
宗渚々美(国際教養大学3年生)
佐藤優花(福島大学3年生)
「モノ」でなく「コト」の大切さを知っているからこそワクワクが止まらない「未来の街」

奇想天外とも思えるユニークな着想と立体的なまちの構想に「審査員特別賞」を贈られることになったのがチームJの「X-minutes Land」企画でした。

規模感もイメージもまさに某・夢と魔法のワンダーランドのような X-minutes Land は、全国47都道府県ごとに区切られた街です。北海道から沖縄まで、日本各地の魅力を凝縮した各エリアを徒歩で巡ることができる、まさにX-minutesな街空間。オンラインを駆使し、各地の実空間とスクリーンを通じてリアルタイムにつながることもできます。

午前中は広島エリアで現地の水産業の方とのオンライン交流、午後はリモートワークで仕事を終わらせ、夕方から北海道エリアの伝統工芸ワークショップでリフレッシュ、なんていうことを日々の暮らしの中で可能にしてしまう街です。文字通りの縦横無尽な「暮らし」が実現できる街、その斬新なアイディアに審査員も一同びっくりしました。

住む人たちのニーズも多彩。リアル移住のハードルは高いけれど移住に興味あり、という人は、お試しで目的のエリアに1週間滞在してみるのもよし。あるいは、Land の魅力にどっぷりハマりたければ、1年滞在していろんなエリアを体感してみるのもよし。コンセプトに「どんな人でもいつでも集まれるまち」を掲げているだけあって、住む人の数だけ暮らし方がありそうです。

こんな構想が生まれたのも、チームの3人で考えた「豊かさ」の定義から。知識が増えることで視野が広がり、人生の選択肢が広がるはず。その自由な生き方が選べることこそ、本当の豊かさだと考えたのです。それを具現化するためには人と人とのつながりが重要です。人との関わり合いの中で、さまざまに視野が広がり、選択肢を広げて自由に生きていくこと。チームJ が描いたのは、そんな「豊かさ」を実現するための究極のX-minutes CITYのカタチだったのです。Z世代ならではのセンスがキラリと光るプレゼンでした。

あくまで人生の通過点
その自由さが社会の多様性を促す

「まちは人生の通過点だというのがこの構想の基本ですね。ひとところに住む場所を定めるのではなく、選択肢を広げていくことで、地域をまたいだ人の交流も進むし、社会も多様化していく。短期的には、オンライン化が進んでも孤独にならず人の流れを身近に感じらることができるといった良さがありつつ、長期的には社会の多様性が増していくことを目指しました」(宗さん)

コロナ禍により、社会のオンライン化が進み、働き方も住まいも一気に多様化しました。そうした社会の変化を繊細なアンテナで捉えたX-minutes Land 構想は、大人たちにもさまざまな気づきをもたらしてくれたように感じます。ターゲットはこれからの人生を考えている若者ということでしたが、世代を超えたニーズがありそうです。


コンテナが広げる「暮らし」の選択肢
〜住まいの自由がもたらす新しい幸せのカタチ

糸藤友作(立命館アジア太平洋大学3年生・休学中)
高倉まどか(立命館アジア太平洋大学3年生)
奥谷龍斗(立命館アジア太平洋大学2年生)
伊藤樹莉亜(立命館アジア太平洋大学2年生)
「モノ」でなく「コト」の大切さを知っているからこそワクワクが止まらない「未来の街」

コンテナという既存の商材に、新しい理想の「暮らし方」というニーズを重ね合わせて、街の概念を丸ごと「ノマド」化したのが、チームC の企画です。全国に点在する「コンテナスポット」と移動式「コンテナ」によって、場所もサイズも選択可能な「暮らし」の自由を実現しようという試みです。

この企画が生まれた背景には、メンバーの一人が「家を持たない」生活をしていることが大きく関わっているようです。東京出身の糸藤さん。別府の大学に通学しつつも住まいを賃貸したことはなく、常に友人宅の押入れの一角を貸してもらったり、屋外でテント生活をするなど、転々としながら暮らしてきました。そうしたノマドな暮らしを通じて人間関係がぐんぐん広がっていったといいます。

「住みたい場所に住めるという選択肢があること」を本当の豊かさだと定義したチームC。チームJ の「X-minutes Land」と方向性は重なりますが、違うのはリアルに日本全土を丸ごと「居住空間の対象」にしたことです。そして、コンテナスポットには「トイレ・風呂・ベッドルーム」という誰もが必要な基本ユニットのコンテナをデフォルトで配置。そこに、自分所有のコンテナを設置することで、「自分だけの居住空間」が整います。

コンテナを増やしたり減らしたりすることで、場所だけでなく、住居サイズも自分のライフステージに合わせて自在に調整可能。これまで比較的一般的とされてきた「終の住処」としての「一軒家・マンションの購入」と真逆の発想です。

「子ども部屋が必要になればコンテナを増やし、子どもが自立していったらまた減らす。都会暮らしの方が便利な時もあれば、田舎暮らしをしたい時もある。暮らしの選択肢が広がることで、人はもっと幸せを感じられるはず」

そもそも、X-minutesで完結なんてしなくていい
自然体をどこまでも追求してみたい

「家を持ったら、そこで暮らし続けていくことになる、という先入観に、モヤっとした課題を抱えていたのが、この企画の始まりですね。もっと自由に、行きたいところに行けたらいいね、という素直な気持ちが持てたのは、やっぱりそれを追求してきた僕らだからこそ」(糸藤さん)

「固定概念への反発がベースにありましたよね。人って変化していくものなんだから、居たい場所もしたいことも変わるのが自然だよねっていう」(奥谷さん)

「私自身、中学生の頃からフィジーやカナダなどで暮らしたり、バックパッカーとして東南アジアを縦断したりしながら、新しい文化と出会って視野が広がりどんどん変化していくことが豊かさだという実感もありましたし」(高倉さん)

「そもそもX-minutesで完結する街、という(このプログラムの)コンセプトへの違和感もあった上での参加でした。なんで完結させなくちゃいけないのっていう」(奥谷さん)と正直に語ってくれた上で、「結果、私たちのアイディアのワクワクした感じを具体的なカタチとして着地させることができたし、他のチームの“豊かさ”の概念に触れたことで、考えも深められました」(伊藤さん)

と参加した経験を前向きに評価してくれました。


今回、EVOLOVE 企画としての初の試みとなったX-minutes CITYプログラムでしたが、「豊かさ」をさまざまに再定義することで、新しい共同体や個人の「暮らし」のカタチへの提言がいくつも生まれました。「暮らす」とは?「幸せ」とは?そもそも「街ってなに?」という、とても根源的で本質的な問いかけから出てきた視点は、既存の業界にいくつもの風を吹き込んでくれました。次なるステージへとつながる種がまかれ、さらに新しい未来を切り開いていきますように。


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『UXD KURASHI LAB.』は、暮らしをより楽しく便利にするための研究所です。イベントやアンケートを通じて集まるラボメンバーのみなさまの「声」をもとに、新たなアイデアやサービスについて発信し、社会・企業へ広げていきます。

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