2021.11.11豊かな暮らしって、なんだろう?

あなたにとって、理想の「暮らし」はどんなカタチをしていますか?

「暮らし」とは、「うちの中」のことだけではありません。家の中はもちろん、家を取り巻く環境をいかに整えていくか。あるいは、家を中心とした生活圏をどのようにひろげていくか。さらには、生活圏におけるコミュニティをどう育んでいくか。それは「理想のまちづくり」という発想へとつながっていきます。

豊かな暮らしって、なんだろう?

EVOLOVEキャンペーンを記念して、初めてUXDセンターが開催する企画「X-minutes CITY」


今回、私たちが掲げたのは「X-minutes CITY」。X-minutes、つまりX分。Xに入る数字は5かもしれないし、10かもしれない。人によっては60くらいまで広がるかもしれません。5分で暮らしが成り立つ、こじんまりした「まち」。あるいは60分圏内で仕事や子育て、勉強やリラックスタイムまですべてが事足りるような「まち」。そんな「理想のまちづくり」について、これからを担う若い学生のみなさんと一緒に考えてみよう。そうした思いから、UXDセンターの“EVOLOVE”キャンペーン企画の1つとして、住まいや暮らしに関するコミュニティ「UXD KURASHI LAB.」と、大学生を対象にしたキャリア形成支援プログラムを開催する「CroMen」 のコラボレーションによって取り組むことにしました。


理想のまちをデザインするのは、
ほかの誰でもなく、そこに住む自分

一人で歩いても楽しい。人と関わり合いながら過ごすのも心地よい。

リモートワークが当たり前の風景になり、家から徒歩圏内で過ごす時間が大幅に増えたことで、「暮らし」のスタイルがさまざまにアップデートされてきたこの1年。「暮らし」が変わったことで見えてきたご近所の風景や、思いがけず生まれた関わり合いがあります。

自分の住まいの周辺を、心地よく整えていきたい。住む人同士のそんな気持ちが化学反応を起こすことで、地域がどんどん魅力的に生まれ変わっていく。そんな事例として、オープニングセッションで参加者のみなさんと共有したのが、2024年までに「あらゆるところに15分でアクセスできるまち」の実現を目指すパリ。かつてはまちのあらゆるところで大渋滞、路上駐車の車だらけだったのが、環境の観点からもシェアサイクルが一気に進み、まちの風景もライフスタイルもガラリと変わりました。

もう1つご紹介したのが、まちのあらゆる街路を心地よく作り変えることで、究極の1-minute cityを実現させたストックホルム。そこに暮らす人たちがワークショップを通じてアイディアを出し合い、ジムや子どもの遊び場、会議スペースなど、個性豊かな街路がいたるところに出現しました。文字通り、徒歩1分の生活圏のアップデートです。
「豊かな暮らしを実現できるまち」をデザインするのは、ほかの誰でもなく、そこに住む自分たち。そんな意識を共有したのち、異なるフィールドで暮らしづくりに携わるお2人の個別セッションを開催、それぞれが考える未来のまちづくりについて、具体的な経験と思いを共有していただきました。


セッション1
「暮らしから住まいを創る 〜長谷工の未来マンション〜」

マンション施工実績No.1の長谷工グループからは、理想のマンションのカタチを日々追求している長谷工アネシスの尾身さんが登場。用地仕入れから設計・建築・管理運営・そして建て替えまで、マンションのライフサイクルをトータルに担う長谷工が考える「未来のマンション」のあり方を共有していただきました。

豊かな暮らしって、なんだろう?

最先端のテクノロジーを活用した未来の住宅に関して第一線で仕事をしているプロフェッショナルと、直接対話ができるという貴重な時間。学生からは様々な質問が寄せられました。

「マンションにとって、何より重要なのは安全・安心を担保するクオリティですが、長谷工グループでは、それに加えて“暮らしの豊かさ”や“住まいの楽しさ”をよりよくしていきたいと考えています。そこで今、長谷工グループは“Building Information Modeling(BIM)”と“Living Information Modeling (LIM)”による「住まい」と「暮らし」の情報プラットフォームの構築に取り組んでいるのです」と尾身さん。

BIMとLIM、ちょっと耳慣れない言葉です。

BIMとは、コンピュータ上に 3 次元化した建物モデルを構築する先進の設計手法のことで、建物の形状や空間構成に加えて部材の数量・材質・仕様などの属性データも含まれています。一方のLIMは、そこに暮らす人の“日常”と住空間としてのマンションの“今”をトータルにとらえて情報として管理していくこと。住む人のライフスタイルや日々の行動、バイタル情報などのソフト面と、建物の利用状況や経年変化の状況といったハード面の情報を蓄積してデジタルデータ化し、マンションの新たな価値の創出へとつなげていこうというもので、さらなる最適解を見つけ出そうとする長谷工の「未来志向」を感じます。

豊かな暮らしって、なんだろう?

長谷工コーポレーションが考える、建物の状態や設備の利用状況、人の動きなどの暮らしに関するデータを活用する概念

「マンション空間は、まだまだたくさんの可能性を秘めています。建物や設備の情報であるBIMに、人と住居の現在進行形の情報であるLIMのデータを組み合わせることで、新しい価値を備えた未来マンションの可能性が見えてきますよ」と、尾身さんが示したのは、ヘルスケア拠点や無人ストア、物流サービスといったものから、エネルギーなど環境へのコミットメントまで、縦横無尽に広がるアイディア。

具体的にLIMを導入検討中の物件として、学生寮や企業寮、賃貸マンションといった異なる人たちが集まる共創型レジデンス<コムレジ赤羽>の紹介などもあり、参加したみなさんも、さまざまな刺激を受け取ったようです。「住む人」にとっての「ハコ」であるだけでなく、まちにとっての財産としてマンションを捉えなおしたことで、そのポテンシャルの高さが見えてきました。

参加者からは、コムレジ赤羽のコンセプトの詳細や、AIを活用した設備の進化について、といった質問も続き、初回の個別セッションは爽やかな熱気とともに終了しました。

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セッション2
「長野の小さなまちで、未来の暮らしを創る 〜長野県小布施町〜」

「自分らしい“未来の暮らし”というお題をいただいて考えた時、それは技術の進歩による効率化みたいなこととは全然違うベクトルのものだと感じました。私にとっての“未来の暮らし”というのは、仕事や食、コミュニティのありかたや時間の使い方など含めて、自分が将来どのように生活したいかを考えることだと思ったんです」

2つめのセッションの冒頭、長野県小布施町に移住することになったきっかけについて語った塩澤耕平さんの言葉です。塩澤さんは、通信会社大手や医療系ベンチャーなどで着実にキャリアアップを重ねていましたが、29歳になった時、“自分らしい未来の暮らし”のカタチを考え、“人の流れの中心にあるようなカフェづくり”を目指して独立を決断します。

夢を実現するための舞台に選んだのは、長野県北部、人口1万1000人の小さな町・小布施でした。当時、小布施では年に1度、全国から35歳以下の若者を集めて「小布施若者会議」を開催、観光や環境、教育などにおける地域の課題を共有し、その解決につながるプロジェクトを若者たちとともに考えるという取り組みを実践していました。

そのプロジェクトをきっかけに小布施と出会った塩澤さん。晩年の葛飾北斎が愛したまちの文化的な香り、カーボンゼロを掲げたまちづくり、古い建物をリノベして活用していく若者主体のプロジェクトなど、移住したくなるまち・小布施の「いいね!」ポイントはいくつもあったといいます。
「まちなかの古い建物をリノベして、コワーキングスペース<ハウスホクサイ>をつくるというプロジェクトを手がけつつ、私の小布施での暮らしはスタートしましたが、実際に暮らしてみると、外部にいるときは気づかなかった軋轢だとか、地域で調整していく難しさなどにも直面することになりまして」と、コミュニティで新しいムーブメントを起こしていくことの苦労も笑顔で語りつつ、「なんとなくやってみたい、程度の気持ちで始めてしまい、心が折れることもしばしばありました。

豊かな暮らしって、なんだろう?

“自分らしい未来の暮らし”を求めて、試行錯誤しながら一歩ずつ前進する塩澤さん

そして今、いよいよ念願のカフェ実現に向けて、土地を購入してカフェ兼自宅となる建物づくりに取り組んでいるといいます。
「購入した土地には小布施の名産である栗林もついており、結果として栗農家も始めることとなりました。映画が趣味である映画についても、地元の短編映画祭に関わったり、子どもが生まれたりと、さまざまな変化が起きています。自分や自分が大切にしている人たちがどんな風に暮らせたらいいのかと考えながら、少しずつ理想に近づいていってるな、という感覚です」

豊かな暮らしって、なんだろう?

東京から長野に移住して奮闘している塩澤さんは、良いことも悪いことも含め、実体験をお話しくださいました。“まちづくり”や都市計画に興味のある学生が多く、参考になったのではないでしょうか。


限られたリソースを工夫することで
豊かな“暮らし”が生まれることもある

「暮らし」の手触りを大切にしながら、気負わず、焦らず、ゆっくりと着実に歩みを進めている塩澤さんの話に、セッションに参加していた学生のみなさんも興味津々。「伝統的な文化を大切にしている地域で変革を起こそうとするときの合意形成のコツは?」「周囲からのネガティブな反応にも折れずに、それを推進力に変えるには?」など、さまざまな視点から質問が飛び出して活発な対話が続きました。

さらに、「“歩いて楽しいまちづくり”のまさにお手本のような小布施の取り組みですね」という感想に対し、自身が小布施でのカフェづくりを目指すきっかけとなった宮城県石巻にあるお店「はまの暮らしのはまぐり堂」の話をしてくれた塩澤さん。
「車でしか行けないような場所にある海辺のカフェなんですね。はまぐり堂ができる前は、震災後に数世帯だけが暮らしている小さな集落でした。目の前には海が広がり、眼下にはヤギがくつろいでいる静かな場所。一見すると、すごく限られたリソースしかないのですが、カネやヒトが溢れたところで何かをつくるよりも、この限られたリソースを工夫していくことで、実はすごく豊かな場所が生まれるんだということに気づかせてもらえたんです」

限られたリソースを丁寧に引き出していくことで、思いがけずに人や地域との化学反応が生まれていくこともある。塩澤さんの人柄が溢れるさまざまなエピソードから参加者が受け取ったのも、そんな心地よいバイブスだったようです。


X-minutes CITYプロジェクトから生まれる
次世代の暮らしのカタチ

フィールドの異なるお2人によるセッションから、参加者である学生のみなさんも、さまざまなインスピレーションや気づきを得たようです。ここから、学生のみなさんは15組のチームに分かれて理想の未来の暮らしを実現するためのアイディアを出し合い、各チームでプレゼンテーションの動画を作成します。X-minutes CITYプロジェクトは3組を受賞チームに選定します。受賞チームによる公開プレゼンは11月19日(金)です。どなたでも視聴できますので、こちらからお申し込みください

Z世代といわれる若い感性がどんな未来の暮らしのカタチを描き出してくれるのか。時代を超えて変わらない普遍的なものと、変化していくもの。いつの時代も、そうした新陳代謝を繰り返して、わたしたちの暮らしは進化してきたのでしょう。X-minutes CITYプロジェクトから生まれる次世代の暮らしのカタチにご注目ください。

豊かな暮らしって、なんだろう?

大学生が考える、豊かな暮らしとは?UXDセンターのメンバーとのディスカッションで、アイデアが膨らみます。

「EVOLOVE」キャンペーンCM