“EVOLOVE”キャンペーンの
オリジナルのテーマソングを制作。

オリジナルテーマソング,EVOLOVE WEEK 2021,EVOLOVE

進化していくって素敵なことだけど、嬉しいことばかりじゃない。
でも、小さなつまずきや小さな痛みをいくつも抱えているからこそ
見えてくる愛の形、幸せの形がある。

“EVOLOVE”の世界観を表現したムービーにぴったりの音楽が生まれました。


「ららら…」

透明感のある声がサビのフレーズを繰り返しています。カラフルなスタジオの中では、“EVOLOVE”のショートムービーアニメにつける楽曲のレコーディングの真っ最中でした。プロデューサーで作詞作曲を手がけたKAKUWAさんが、ボーカルのたにおさんに声をかけます。

「これ、単なる“ら”じゃなくて、小さな“ぶ”が後ろにあるからね、そこを意識してね」

こちらも思わず意識して再び歌声に耳を傾けてみると、確かに小さな「ラブ」がたくさん聞こえてきました。

KAKUWAさんとたにおさんは、mubiというユニットを組んでおり、この楽曲「ヒナギクは何色」がmubiのデビュー曲です。実はKAKUWAさんは、EVOLOVEキャンペーンの世界観を伝えるアニメーション動画のクリエイティブディレクターである各和佑樹さんと同一人物。映像と音楽、両方を生み出した人なのです。レコーディング終了後、mubiの二人に加えて、音楽監督の立山秋航さんに、この楽曲がどのようにして生まれたのか、お話を聞きました。

“EVOLOVE”キャンペーンのコンセプトムービーに、オリジナルのテーマソングを制作。

左から 立山秋航、たにお、KAKUWA


音楽とアニメ、両方のプロデュースを手がけられていますが、音楽と映像、どちらのイメージが先に生まれたのでしょう?

KAKUWA同時進行で生まれていった感じですね。元々、幸せの形や愛の形を世界中の人に届けたいという、非常に抽象的なお題がありましたので、それを、どの世代の人でも共有できそうなイメージで表現したいと考え抜いて、そこから出てきたのが「心のささくれ」みたいなものでした。


心のささくれですか。

KAKUWA人との関わりの中で、ふと抱いてしまう違和感だったり、ネガティブな気持ちだったり、そんな瞬間をイメージしました。誰かに向けてネガティブな感情を吐露した時、思わず自分も哀しい気分になってしまうのは、実はどちらも愛すべき存在だし、どちらも幸せになりたいと思ってるっていう理解がベースにあるからじゃないかと思うんですね。目の前にあるのに、気づかないふりをしてしまう「愛」とか「幸せ」の1つの形。世代を問わず、誰もが既視感を抱く感覚じゃないでしょうか。

アニメーションでは、猿が人へと進化していくことは、必ずしも嬉しいだけでも楽しいだけでもない、進化の過程で直面する厳しさみたいなものも含めて表現している一方で、歌においても、やっぱり日常の中で「心がささくれていく」ようなことがたくさんあるんだということを形にしました。その「心のささくれ」から逆に愛や幸せが立ち現れてくるようなことを表現できたらと考えたんです。

楽しいだけでもないし哀しいだけでもない、明るいだけでも暗いだけでもないメロディで、表情のない猿や人のアニメーション同様、見る人、聴く人にそこの解釈は委ねたいなと思いました。

“EVOLOVE”キャンペーンのコンセプトムービーに、オリジナルのテーマソングを制作。

左から たにお、KAKUWA


確かに、ふんわりしたメロディかと思いきや、ちょっと寂寥とした感じの和音が混じり込んできたりしていて、妙に耳に残りました。

立山そこは僕のアレンジの部分ですね。最初に各和さんから音楽のデモと映像の絵コンテをもらった時に感じたのは、決して暗くはないけれど、明るさ一辺倒でもないな、という印象。各和さんがイメージしている、明るさの中の切ない感じをどうやって際立たせていくかな、と考えて和音の運びなどをアレンジしていきました。最初はワンコーラスのデモテープをもらったので、その部分だけアレンジして返したら、次はフルコーラスのデモがきて。そこで歌詞の全体像も見えてきたし、発展性のある物語として世界が動き出した感じがしました。

“EVOLOVE”キャンペーンのコンセプトムービーに、オリジナルのテーマソングを制作。

具体的にどんな物語へと動いていったのでしょう。

立山フルコーラスのデモを聞いた時、サビのつなぎの部分が8小節になっていたのですが、僕はここをもっと引っ張った方がいいと考えて、倍の16小節にアレンジしました。そこに現代人の生活の刹那的な慌ただしさをいろんなガヤで入れ込んでみたところ、うまく作品の世界観とマッチしたように感じました。


確かに、携帯やメールの着信音がそこはかとなく飛び交って、思わず自分のスマホに手を伸ばしそうになりました。

立山日常の忙しさに心が埋没していく感じのリアルさですよね。そこに、たにおさんの「ららら」が流れると、明るさ一辺倒じゃない、現代を生きる人たちの切なさ混じりの物語性が出せると思ったので。

KAKUWAそこは完全に僕の頭の中になかった世界でした。僕のイメージからさらに一気に物語の奥行きが広がっていった感じで嬉しかったですね。


たにおさんは、単なる「ららら」じゃなくて、小さな「ぶ」が挟まって、小さな「ラブ」になるんだってイメージ、どうやって歌いました?

たにお正直、難しかったです。どうやったら単に無邪気なだけじゃない「ららら」を出せるのかな、と、なんども歌っては確認、の繰り返しでした。

KAKUWA今のはラブ70%くらいだったかな、とかね(笑)。

たにおAメロは、具体的なエピソードも散りばめられていますから、なんとなくイメージをつかみやすいのですが、「ららら」は、どうやって歌えばいいんだろうって試行錯誤でした。

立山でも、そこで際立つのは、やっぱりたにおさんの声の独特さですよね。すごく透明感のある声なんだけど、無味無臭ではない。印象に残る声質なのに、でも歌い方がとてもプレーン。これって、誰にでも出せる声じゃないなと思います。

“EVOLOVE”キャンペーンのコンセプトムービーに、オリジナルのテーマソングを制作。

そうした一人一人の化学反応から、この作品が生まれたわけですね。ところでみなさんは、自分の「愛」をどんなところで感じますか?

立山人と人が関わり合って支え合って、みたいなイメージで語られがちな愛ですが、僕は、あえて関わりすぎないこと、ぐっとこらえて適切な距離を保つことも愛の形だろうと考えてます。今はSNSなどによって相手に簡単に入り込んでしまえるために、知りたくないこと、知らなくてもよかったことまで知ってしまう。相手との距離感が保てなくて余計な諍いに発展してしまう。そんなことがあまりに多いと感じています。

相手との距離感を保つこと。自分とは違う存在としてリスペクトすること。そういう、節度ある「愛」の形を大切にしたいです。


それが立山さんの今回の作品への姿勢に現れてるかもしれないですね。作品の世界観へのリスペクト。

KAKUWAそれはすごく感じます。先ほどもお話したように、アニメーションと同時進行で制作を進めていったのですが、立山さんは、アニメーションの進捗を都度ていねいに確認しながら、細かなタイミングなどに合わせて、どんどんアレンジを加えてくれるのです。あ、こんな風に岩が崩れるのね。だったらこのタイミングでこんな音に、といった具合に、まさにメタモルフォーゼ、音楽が変身していく。その柔軟さに立山さんの「愛」を感じました。

立山映像から必死にヒントを探すんです。楽器中心で進めていくのではなく、映像優先で考えていくと、これまでの自分の音楽になかった新しい引き出しが開いていくんですね。で、こっちの音楽に合わせて、アニメーション作家の秦さんから送られてくる映像がさらにビルドアップされていたりすると、ますます嬉しい。

たにおそれは、自分にとっての「愛」の形とも重なります。愛って相手のことを「考えること」だと思っているので。相手のことを思い浮かべながら、相手の気持ちを考える。作品のことを考えることもその延長にあります。

KAKUWAすばらしいクリエイターの人たちが参加して、僕がイメージする「こういうもの」をはるかに超えた作品の形が見えてくる。世界観がアップデートされていく。人の心が相手の心を動かしていく、まさに、僕が目指しているのは、こういうムーブメントそのものなんです。


UXDオンラインキャンペーン「EVOLOVE」ブランディングCM
UXDオンラインキャンペーン「EVOLOVE」ブランディングCM

Profile

立山秋航作曲家・編曲家

代表作に、人気アニメシリーズ「ゆるキャン△」「けものフレンズ」劇伴、CM「日立エレベーター」「ポカリスエット(インドネシア向け」音楽 等がある。2021年は、日本テレビ系ドラマ「探偵・星鴨」、テレビ朝日系ドラマ「ザ・ハイスクール ヒーローズ」主題歌 KAT-TUN「EUPHORIA」(編曲)、GACKTツアー「LAST SONGS 2021 feat.K」(ツアー用編曲)等を手がける。

mubi
mubi

たにお(Vo)とKAKUWA(クリエイティブディレクター)からなるクリエイティブ・プロジェクト。
性別や年齢に縛られない不思議な歌声を持つたにお。広告・コンテンツクリエーターであるKAKUWA。音・ビジュアルを自ら総合プロデュースする形で作品を発表する異色ユニット。
デビュー曲「ヒナギクは何色」をデジタルシングルとして11月に配信予定。公式You Tubeによる動画配信も準備中。

mubi